「……へえ、いい名前」
「じゃあ俺も聞くけど、お前の名前は?」
「月岡侑里。
ツキオカは月に岡山の岡で、ユウリはにんべんに有ると里で書く」
「……ふうん」
彗の相槌は、私のそれよりずっと優しく響く。
「何かあったのか?」
「……まあ」
「お前の事だから、どうせなんか些細なことだろ」
「その通り。
部活の同級生に質問をされて、それに逆上しちゃって冷ややかに返事をして、優等生の私が崩れるって絶望してた」
驚くほど冷たく、落ち着いて話せた。
「なんだよ、お前、優等生演じてんのか。
疲れそー」
「……しょうがないじゃん」
息を吐き出すと、空気を白く染めていった。
「……今年、暖かいんだってね。冬」
「ニュースでも言ってたよな」
「うん。雪、降ってほしいんだよね」
「なんで?」
「……部活がなくなって欲しいから」
彗とはまだ会って2回目なのに素直に自分を出せる。


