グロリア視点

私の名前はグロリア。
伯爵令嬢。
私の双子の姉であるセシルは私はなんかと違ってとても美しい容姿を持っている。

蜘蛛の糸のような銀色の髪にルビーを嵌め込んだみたいな瞳
誰もが美しいと姉を絶賛する。
でも美しいのは容姿だけ。
姉は性格が悪い。

社交界で言い寄ってくる男で上流貴族なら相手をするがそうでない相手には冷たくあしらうそうだ。
おまけに淫乱でどんな男にでも直ぐ体を開くそうだ。

私は体が弱くて社交界にあまり出られない。
でも社交界に出るとお姉様のせいでいつも虐められる。
お姉様はそんな私を助けてはくれない。

お姉様は私と違って美しくて、頭も良い。
でも私だって体が弱くなければお姉様と同じぐらい勉強して、お姉様と同じぐらい頭が良くだってなる。

「グロリア、どうしたんだい?」
「ミハエル様、どうして此処に?」

ミハエル様はお姉様の婚約者だ。

「伯爵に用があってね。
帰る途中、中庭で泣きそうになりながら部屋に戻る君を見かけてつい引き返してしまったんだ。
グロリア、一体何があったんだい?」

私は自分の部屋にミハエル様を招き、お茶会で会ったことを話した。

「お友達を使って私を無理やりお茶会に参加させた挙句、私の容姿と自分の容姿を比べさせるなんて、お姉様、ひどいわ。
わざわざ比べなくたって私なんかの容姿がお姉様に勝つわけないのに」
「グロリア、そんなことはないよ。
君だって十分可愛い」
「お気遣いありがとうございます。
やはりミハエル様はお優しいですわね」

私の答えにミハエル様は困ったような笑みを見せた。

ミハエルとしてはお世辞を言ったわけではない。
顔を隠すための長い前髪と大きくて丸い眼鏡のせいで分かりにくいがグロリアも可愛い顔をしているのだ。

「みんなで、さんざん私のことを笑い者にしたあと、お姉様は私に退席を命じました」
「・・・・グロリア」

労わるようにミハエル様が私を見る。
私は何とか笑おうとしたけれど失敗し、ポロリと目から一粒涙がこぼれ落ちた。

「いいのです。
慣れていますから。
きっとお姉様は私のことがお嫌いなのよ」

「可哀想なグロリア」
そう言ってミハエル様は私を抱きしめてくれた。
私は彼の腕の中でそっと目を伏せた。