誠は、この世界が自分が生まれる前の過去のものだとわかった。
あの男の人と女の人は同じ大学に通っていて、その大学にかけられたカレンダーを見て、わかったのだ。
男の人の名前は田中誠一郎(たなかせいいちろう)、女の人の名前は天野真紀子(あまのまきこ)という。
その名前も、誠はどこかで聞いたことがあるような気がした。しかし、それがどこで聞いたものか思い出せない。
誠はこの世界の人には見えず、声も聞こえないようだ。そして、触れることもできない。
誠はあの二人のそばにいたまま、離れることがなかった。離れてはいけないと思い離れられなかった。
あの二人は、一緒に過ごすことが多くなった。そして、バレンタインの日、真紀子は同じ誠一郎にチョコを渡した。
「初めて会った時から、ずっと誠一郎くんのことが好きです。……付き合ってください!」
真紀子の頭に誠一郎はそっと触れ、優しい笑顔を見せた。
「僕もずっと好きでした。こちらこそ、よろしくお願いします」
二人は一つになった。


