誠と女の人は、同時に振り返った。

そこには、すらりとしたモデルのような体型の背の高い男性がいた。顔もどこかの俳優のように華やかだ。

誠はこの男性にも、見覚えがあった。とても懐かしいと感じ、不思議に思う。

「実は…さっき引ったくりにあってしまったんです…。かばんの中には、財布や大切なものがたくさんあって……」

「犯人はどんな格好でしたか?」

男の人が真面目な表情で女の人に訊ねる。女の人から犯人の特徴を聞くと、男の人は犯人が逃げて行ったという方向へ走って行った。

女の人は赤く頰を染めて、男の人が走って行った方向を見つめる。

それから三十分ほどがたったころ、男の人が引ったくり犯を引きずりながら戻ってきた。その手には、女の人のかばんがある。

「ありがとうございます!」

女の人は何度も頭を下げた。男の人は「いえいえ」と繰り返す。

「あの、今度お礼をさせてください」

二人の物語は、そこから始まった。