「今日、せっかくだし飲みに行こうぜ!お前の誕生日祝いもかねてさ」

「いいね!楽しみにしてるよ!」

二十歳でお酒も飲めて、タバコも吸えるのか……そう誠は心の中で呟いた。もう立派な大人なのだ。未成年ではない。

大人になった二十歳の誕生日が、誠にとってどの誕生日よりも特別に思えた。

しかしお昼頃、友達と飲みにいくのを楽しみにしていた誠だったが、バイトから連絡が入った。今日シフトだったはずの人が来れなくなり、来てもらえないかという内容だった。

バイトや仕事に誕生日はないか……。熱が一気に冷めていく瞬間だった。

誠はバイトに行くことにし、友達に謝った。



夜の八時、誠はバイトを終えアパートに急いで向かっていた。

家に帰っても誰もいない。義理の両親が温かいいつもより少し豪華な食事やケーキ、きれいにラッピングされたプレゼントを用意して待っているわけでもない。

恋人……は誠にはいない。アパートは暗く、誕生日に食べる夕食は買い置きしてあるカップラーメンになるだろう。今までで最も寂しい誕生日だ。