真紀子は自分の両親にも、妊娠したことを伝えた。とうぜん驚いていたが、真紀子を優しく抱きしめていた。

そして真紀子が選んだ選択は、お腹の赤ちゃんを産むことだった。

そのことを先生に伝えた時、誠は心から安心し、その場に座り込んでしまった。真紀子がもしも中絶を選んだらどうしようという恐怖がずっと胸にあった。なぜ、そんな恐怖を感じたのか誠は自分でもよくわからない。

「わかりました」

そう言って先生は微笑む。真紀子もようやく、幸せそうな表情を浮かべた。

「大切な人の子どもだからこそ、産みたいと思ったんです。私の一生をかけて愛します」

その言葉が、誠を幸せで満たす。目から涙がこぼれた。

真紀子のお腹は少しずつ大きくなっていく。赤ちゃんの体動を感じるたびに、真紀子は嬉しそうに笑う。誠も幸せになった。

そして、十一月十日。綺麗な青空が広がっている日だった。

真紀子は男の子を産んだ。元気な男の子。

分娩室に産声が響く。誠の目から涙がこぼれ、流れていく。

真紀子は、産んだ我が子の小さな手に指を近づける。その指をぎゅっと赤ちゃんが掴んだ。

「この世に生まれてくれて、ありがとう」

真紀子が涙をこぼして、言う。

「誠」

誠は驚いて目を見開く。しかし、すぐにやっぱりそうだったんだと理解した。