真紀子が真っ青な顔のまま、トイレから出てきた。
そして、呟く。
「赤ちゃん……できてる……」
スティックは陽性反応を示しめいた。誠の目の前が真っ暗になる。真紀子の目から涙がこぼれた。
真紀子はしばらく泣いたあと、スティックをかばんの中に入れ、病院へと向かった。そこは、誠とは無縁の産婦人科だ。
幸せそうにお腹を撫でる妊婦で待合室はいっぱいだ。誠は、真紀子の苦しげな表情に胸が痛くなった。
真紀子だってここにいる妊婦たちと同じように、幸せを感じながらここにいたかったはずだ。しかし今は、どこにも幸せはない。
「天野真紀子さん、どうぞ」
「はい……」
診察室に重い足取りで真紀子は入る。優しそうな顔をした女の先生がそこにいた。
「あの…妊娠してしまったみたいで…。でも、私は未婚ですし……」
真紀子がそう言うと、先生は「詳しい検査をしましょう」と言った。
誠は真紀子を見ているのが辛く、診察室から出た。初めて真紀子から離れた瞬間だった。
新しい命が、真紀子の中に宿っている。しかし、真紀子は嬉しそうではない。それはそうだ。愛した人を失ったばかりなのだから。
幸せそうな妊婦の顔をしばらく見てから、誠は診察室へと戻った。
思っていたよりも長い間、誠は離れていたようだ。
先生が「たしかに妊娠していますね」と言い、真紀子の表情がこわばる。
そして、呟く。
「赤ちゃん……できてる……」
スティックは陽性反応を示しめいた。誠の目の前が真っ暗になる。真紀子の目から涙がこぼれた。
真紀子はしばらく泣いたあと、スティックをかばんの中に入れ、病院へと向かった。そこは、誠とは無縁の産婦人科だ。
幸せそうにお腹を撫でる妊婦で待合室はいっぱいだ。誠は、真紀子の苦しげな表情に胸が痛くなった。
真紀子だってここにいる妊婦たちと同じように、幸せを感じながらここにいたかったはずだ。しかし今は、どこにも幸せはない。
「天野真紀子さん、どうぞ」
「はい……」
診察室に重い足取りで真紀子は入る。優しそうな顔をした女の先生がそこにいた。
「あの…妊娠してしまったみたいで…。でも、私は未婚ですし……」
真紀子がそう言うと、先生は「詳しい検査をしましょう」と言った。
誠は真紀子を見ているのが辛く、診察室から出た。初めて真紀子から離れた瞬間だった。
新しい命が、真紀子の中に宿っている。しかし、真紀子は嬉しそうではない。それはそうだ。愛した人を失ったばかりなのだから。
幸せそうな妊婦の顔をしばらく見てから、誠は診察室へと戻った。
思っていたよりも長い間、誠は離れていたようだ。
先生が「たしかに妊娠していますね」と言い、真紀子の表情がこわばる。


