この世界は不思議だ。毎日必ず誰かが生まれ、誰かが死んでいく。毎日が誕生日で命日だ。

十一月十日。今日、田中誠(たなかまこと)は二十歳になった。

「誕生日おめでとう!」

朝、誠に両親からメールが送られてきた。覚えていてくれていることに、誠は感謝し、「ありがとう」と返す。

高校を卒業し、誠は東京の大学へと入学した。住み慣れた土地を離れ、東京で一人暮らしを始めた。やっと今の環境にも慣れたところだ。

両親は誠を心配して、しょっちゅうメールで体のことなどを気遣ってくれる。それは嬉しいことなのだが、誠は虚しく感じる時もあった。

両親と言っているが、誠は両親とは血は繋がっていない。今の両親は誠の叔父と叔母だ。

誠の本当の両親は、誠が幼い頃に事故で亡くなった。両親のことは何も覚えていない。

義理の両親は、アルバムをめくって「この人たちがあなたの本当のお父さんたちだよ」と教えてくれた。しかし、アルバムの写真を見たことがあるのは数回でどんな顔だったかも覚えていない。