嫌な予感で頭がいっぱいになって、目の前がゆらゆら揺れている。

・・・泣いちゃダメだ。
まだハッキリ言われたわけじゃない。

そう思って、頭を占めるその言葉を否定する。
涙がこぼれ落ちないように目に力を入れた。
だけど。

「えっ!?」

無言だった私が気になったのか、コートを脱ぎ、カッターのボタンを外し始めたひろ君が急に振り返り、ビックリした声を出した。

「何で泣いてるの!?」

どうやら、涙は私の努力を無視して頰に流れてしまったらしい。
らしい、というのはもう、頭の中のそれにとらわれてしまって、他の事が考えられなくなってしまったから。
流れていく涙の感触すらわからなかった。

「えっ、俺なんかした?」

ひろ君がオロオロしながら、カッターの袖を私の目の周りに押し当ててくる。