12月に入り、街のクリスマスムードが強くなった第2週目の水曜日。

私は、高くはないがヒールのある靴の為に全力疾走できず、それでも小走りで家へと向かっていた。

「なんで終業間際に仕事押し付けてくるのよ、あのタヌキッ」

我ながら口がよろしくない。
と思うが、グチが止まらない。

終業間際に約50ページもあるデータの打ち込みを押し付けられて、しかも押し付けた当の本人はそのままヘラヘラと飲み会へと参加してしまった事から、私は今ご立腹だ。

今日は私が食事当番で、しかも醤油を切らしていたから買い物にも行かないといけなくて。
だから、定時で帰るために急いで仕事を終わらせたのに。

イルミネーションがキラキラと輝く大通りを、人を避けながら急ぐ。

きれいだな。
土曜日の夜にでも、ひろ君と見に来ようかな。

そう思いながら、街路樹を彩るイルミネーションから、進行方向へと視線を向けた時だった。