この空を羽ばたく鳥のように。





 「……鳥?」

 「尉鶲(ジョウビタキ)ですよ、さより姉上」

 「ジョウビタキ?」



 喜代美は少し興奮気味に教えてくれた。



 「ええ。紋付鳥ともいうんです。ほら、両翼に白斑があるでしょう?」



 たしかに左右の翼にひとつずつ、白く染め抜かれた部分がある。

 しかし、あの鳥のどこがそんなに喜代美の心を満たすのか。


 さっぱりわからん。


 またもや首を傾げながら 無表情に小鳥を見つめていると、喜代美が少し困ったように微笑んだ。



 「あの、つまらないですよね。すみません」

 「いや、そんなことない!うん、可愛らしいよ?」



 私はわざとらしく何度も頷く。

 雀くらいの、本当に可愛らしい鳥だ。

 頭は銀色で、頬から顎にかかる部分と羽根は黒い。
 そこに両翼の白斑が鮮やかで、そして何より腹部の橙色が目をひく。



 「あれはオスです。メスにも翼に白斑がありますが、身体は灰褐色なんです。
 かすかに鳴き声が聞こえたから近くにいると思いましたが、見つけられてよかった」



 嬉しそうに喜代美は言う。
 さすが生き物のこととなると喜代美は詳しい。

 けれどその豊かな知識にもまるで興味がない私は、軽い相槌(あいづち)を打つだけだった。