家族一同が並んで、両兄君がお帰りになるのを見送ると、やっと肩の荷が下りた。
「にぎやかな夕餉でしたね」
「ああ やはり、若い者はいいのう!血気盛んじゃ!わしも気が若やぐわい!」
「まあ、ほほほ。ならばぜひまたお越しいただきたいですわね」
そんな会話を交わしながら、父上と母上はえらくご満悦で奥へと下がってゆく。
(冗談じゃない!もうこりごりよ!)
げんなりして思わず自分の肩を叩いてしまう。
ああ、疲れた。
自分でも初めて気づいたが、どうやら私は年頃の若者が苦手のようだ。
あの血気盛んなところというか、冬なのに鼻や額の脂が光ってるところとか、腕や足がモジャモジャなとことか……。(喜代美の兄君なのに申し訳ないけど)
それに、私を品定めでもするかのように向けられる好奇な視線も嫌だったし、変にからかわれるのもうんざりした。
おまけに八郎さまの態度だって……。
「……はあ~」
とにかく 疲れた。
「―――姉上」
「ん?」
後ろにいた喜代美が声をかけ、ふいに私の肩をぽんぽんと払う。
「え?なに!?」
何をされたのかと、驚いて自分の肩を見つめる。
「糸くずがついておりましたよ。着替えもせずに、機織りをしていたのでしょう?」
「だって……。せっかく喜代美の兄君がたがおいでなのに、普段着になんてなれないじゃない」
だからしかたなく兄君がたが帰るまではと、このままの格好で仕事や家事を続けていたのだ。
「……べつに 構わないじゃないですか」
「そうもいかないわよ。普段の姿じゃ、金吾さまに“器量良し”だなんてお世辞でも言われなかったわよ。
せっかく得た評判を落としたくないじゃない」
自分の器量くらい自覚してるってんだ。
しかも私は愛想が良くない。
いつもにこにこしている早苗さんのように、可愛らしく笑えない。
「………」
喜代美は静かに私を見つめていたけど、ついと顔をそらせて何も言わずに部屋へと戻っていった。
(……なによ。何とか言ったらどうなのよ)
なんでそんな 軽蔑するような目で見るの?
嘘でも否定してくれたっていいじゃない?
早苗さんの時みたいに「そんなことないですよ」って、
どうして私には言ってくれないのよ………。
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