幸いにも、子猫はまだ餌を食べる力が残っていた。
ゆるいお粥に鰹節をかけて与えたら、時間をたっぷりかけたけれども全部たいらげてくれた。
母猫や他の子猫達を埋めて戻ってきた喜代美も、もちろん私も、その姿を見て安堵した。
子猫は『虎鉄』と名づけられ、屋敷で飼うことになった。
名づけたのは、もちろん喜代美。
背中の虎縞模様と生き残ったたくましさ、そしてこれから生き抜いてゆく強さを込めてつけられた名前だ。
「喜代美が望むなら、父上はどんな願いでも聞き入れてくれるはずよ」と 私が入れ知恵したから、
喜代美は思い切って父上に虎鉄を飼うことを願い出た。
父上も、喜代美の初めての願いを聞き入れないはずがない。
二つ返事で許可が下り、喜代美は心底喜んで少年らしい満面の笑顔を見せた。
※安堵……心配事がなくなって安心すること。
※入れ知恵……人にある考えや策略を教えこむこと。
※満面……顔いっぱい。顔じゅう。
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