令和2年(2020年)、立春―――――。
「……この大空に……翼を広げ、飛んでゆきたいよ―――」
白鳥を見つめながら、つい口ずさんでいた。
なんだっけ、この歌。幼い頃に聴いてた気がする。
それとも小学校か中学校の時に習ったんだっけ。
まだそこかしこに残る雪が、冴え冴えとした水面とともに光を放つ湖のほとり。
私はそこにある柵に寄りかかり、どうでもいい歌のことを考えながら、湖で羽を休ませる白鳥の姿を目で追っていた。
べつに、白鳥が好きなわけじゃない。
湖が好きなわけでも、ここの景色が好きなわけでもなかった。
これといった目的があるわけでもないのに、なぜかこの冬の時季になると、いつも自然と足が向いて、知らずここに来てしまう。
そして私は今日もまた、バスを乗り継ぎ、ひとり湖畔に立つ。
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