この空を羽ばたく鳥のように。





 小糠雨は続いていた。

 源太を先頭に門を出ると、すぐ雑踏に揉まれて流されるようにお城へ向かう。

 けれど人の流れも、お城へ向かうほうとお城から離れるほうとまちまちで、なかなか進むことができない。

 お城まではほんの短い距離のはずなのに、うかうかしていると源太とはぐれてしまいそうだ。


 前が塞がり、しばし立ち止まったとき、私は今来た道を振り返った。


 屋敷が心残りなのではなく、ふと竹子さま達のことが気に掛かったからだ。



 (竹子さまはどうなされたかしら。もうお城へ向かわれたかしら)



 稽古のおりに「お城が危急の時には、わたくし達が照姫さまをお守りいたしましょう」と意気込んでおられた竹子さまのことだけに、いち早くお城に駆けつけておられると思うけど。



 (お城へ入ったら、私も照姫さまのもとへ参ろう。
 きっと竹子さまもおそばにおられるはず)



 心の中でそう決めながら、お城を求めて人と人のあいだに出来た隙間に身を滑り込ませるように私達は進んでゆく。


 源太が向かう先は、屋敷から一番近い西出丸右手の西大手門。

 そこにいつもの倍の時間を費やしながらも、やっと城門の見えるところまで到達した私達は、思いもよらない事態に愕然とした。