私の言葉を受けて、耳を疑うそぶりで竹子さまが目を瞠る。
「……これは異なことを。あなたは薙刀で敵を打ち払いたいと申して、わたくしに教えを乞うたではありませんか」
「確かにそのとおりでございます。ですが私はある者の話を聞き、考えが変わりました」
竹子さまは眉をひそめた。
「その者とは、どなたのことです」
それには答えず、ゆっくり目を伏せる。
そんな私に、竹子さまは憤るように言葉を投げつけた。
「ここに集まるのは、みな戦で大切な家族や親戚を失った方々ばかり。
もし敵が城下まで攻め入ったとき、たとえ女の身であろうとも主君のために身命を擲つと心に決めた者達が集うておるのです。
戦う気がないなどと……あなたはこの方達を前にして、恥ずかしいと思わぬのですか」
私はまわりを見渡す。どの婦人も竹子さまと同意見とばかりに、険しい表情で非難の色を示していた。
今まで稽古場で仲良くさせていただいた竹子さまのご母堂のこう子さまをはじめ、依田まき子さま、妹の菊子さんも冷たいまなざしを私に向けている。
竹子さまのご家族でも、父君の平内さまは青龍隊に、弟君の豊記さまは朱雀隊に所属していて、ともに西軍の侵攻を食い止めるべく出陣されていた。
けれど先の白河戦で豊記さまは右足を負傷され、城下へ戻られているという。
依田まき子さまと妹の菊子さんは、ご老公さまが京都守護職で在京のおりに、家族で上洛して世の情勢を間近で見てこられた方がただ。
まき子さまは、鳥羽・伏見の戦いで婿である源治さまを失っており、西軍に強い恨みを抱いていた。
稽古に励むときも、「必ず敵に一太刀浴びせてやりますわ」と口癖のようにおっしゃって真剣に取り組んでおられた。菊子さんも思いは同じだろう。
大切な人を突如奪われた怒りや憎しみ。そして悲しみ。
それは私の心の中にも渦巻いている。
けれど、本当にそれでいいのだろうか?
怒りの感情に支配されるまま、身を焦がしてもいいのだろうか?
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