皆が注目するなか、竹子さまと私は防具を身に付けると、薙刀を手に道場中央の位置につく。
礼をして、お互い中段に構える。
婦人達の興味津々なまなざしと降り続く雨音が稽古場に注がれるなか、集中力を研ぎ澄ませた。
(大丈夫。何も気にしない)
竹子さまに勝つことだけを考える。
頼まれた優子さんが立ち合い人となり、薙刀を交えて向かい合う私達の前に立つと手を挙げた。
「始め!」
「やあああ!」
優子さんが手を振り下ろすと同時に、鋭い気合いを発する。
(竹子さまは、やっぱり隙がない)
私に向けた切先をピタリと据え、自分から仕掛けることはせず、こちらの出方を待っている。
じりじりと間合いを詰めながら、私は左右の手を持ちかえて構えを中段から八相に変えた。
八相は、攻撃の構え。勢いよく踏み込んで、上段から面を狙った。
「やああ―――っ!」
反応する竹子さまは、眉ひとつ動かさずそれを払う。
弾かれた反動を使い、今度は脛を狙う。
しかしそれも、竹子さまは半身を引いてたやすく柄で防いだ。
私はすばやく八相の構えで持ち手をかえ、反対側の胴を狙う。
けれども無駄のない動きで中段に構え直した竹子さまがそれを弾く。
(ならば)
今度は中段からの出端技。大きく踏み込んで小手を狙った。
竹子さまは開き足で左側へ身を引きそれをかわすと、そこから踏み込んで面を打ち下ろす。
首をひねり、かろうじて面を避ける。けれどかわした薙刀が肩を打ち、ビリビリと痺れた。
「これが真剣なら致命傷でしたわね」
竹子さまが余裕を見せつけ悠々と笑う。
「……まだまだ!」
荒々しく叫ぶと、竹子さまに向き直り再び中段に構える。
小刻みに左右に動き、隙を狙う。
竹子さまが挑発するように薙刀を低く下げ、前を開けた。
(ワザと隙を空けるなんて)
カッとなって踏み込む。感情的になったせいで、踏み込みがあまい。
竹子さまが下ろした薙刀で下から打ち払う。
軸足でなんとか踏ん張り、八相に構えてから前の膝を折ると薙刀を振り下ろして脛を狙った。
竹子さまはふわりと後ろに飛んで、私の攻撃を難なくかわす。
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