この空を羽ばたく鳥のように。




 黙って見つめていた竹子さまは、呆れたため息をついた。



 「さよりさん。あなたはいつもいきなり現れて、突拍子のないことを申しますのね」



 冷ややかに降る声に、頭を下げたまま応える。



 「竹子さまには数々のご好誼(こうぎ)をいただいておりながら、まこと申し訳なく思っております。
 この願いさえ叶えてくださるのでしたら、これ以上ご迷惑をおかけするような真似はいたしません。
 稽古場の出入りを差し止められてもかまいません。ですからなにとぞ……」

 「わかりました」



 切々と述べる声を遮断するように応じて、竹子さまは立て掛けていた薙刀を手にした。



 「お望みどおり、勝負いたしましょう。
 皆さんが見ている前で、あなたのその自分勝手で浮薄(ふはく)な振る舞いを、叩き直して差しあげます」



 顔をあげて思わずつばを飲み込んだ私に、竹子さまは挑戦的な目を向けうっすら微笑した。










 ※好誼(こうぎ)……相手の好意にもとづく、心のこもったつきあい。

 ※浮薄(ふはく)……人情・行動・風俗などかうわついていて、しっかりしていないこと。


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