目が覚めると、空が白み始めたのか、部屋の中が明るくなっていた。
(朝だ……)
ぼんやりと考えながら、心地よいぬくもりに起きあがることができない。
まどろんでいる意識がだんだんはっきりしてくると、静かな寝息が聞こえた。
そっと見上げると、愛しい人の寝顔がそこにある。
柱にもたれたまま、羽織で包んだ私を抱えるようにして眠る喜代美の端整な寝顔をじっと見る。
見つめていると、幸せと愛しさが込み上げてくる。
このまま 離れたくない。
ずっと そばにいたい。
けれどそう思う反面、心のどこかで「もうよいのだ」と区切る思いもあった。
だって、もう分かったから。
喜代美の想いも。
そして私の想いも。
「喜代美、起きて……」
「ん……」
そっと頬に触れると、長いまつげがピクリと震えて、おもむろにまぶたが開かれる。
幾度かまばたきを繰り返したあと、私を視界に捉えた瞳が優しく微笑んだ。
「……おはようございます」
少しかすれた声が、私の耳に甘く届く。
いとおしくて、自然と笑みがこぼれた。
「おはよう……いつの間にか眠っちゃったね」
「そうですね。身体は痛くないですか?」
「うん、平気……。喜代美こそ一晩中私が寄りかかっていたから、身体がつらかったでしょう?」
身体を起こしてその場を退けると、自由になった喜代美は肩を回し首をコキコキさせて笑った。
「いいえ、ちっとも。あなたの重みが心地よかったものですから」
少し照れた表情でこちらを見ながら言うから、私の顔が熱くなる。
「かっ……からかわないでよ!重かったなら素直にそう言いなさいよ!」
「ああ、はい。重かったです」
「~~~もうっ!」
腹が立って、喜代美の肩をバシンと叩くけど、彼の顔から笑顔は消えない。
喜代美の顔に再び戻った笑顔。
それが、とてもとても嬉しかった。
「ふざけてないで、先に井戸で顔を洗ってきたらどう?
皆が起きてきて、こんなところ見られたら大変よ」
「ああ、そうですね。では、先に参ります」
照れくさそうにうなじを掻くと、喜代美は立ち上がり、皆に気づかれないよう静かに障子を開けて出ていった。
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