べつに傷ついてなんかいないわ。 ほら、涙だって出てこない。 私は喜代美の一番の理解者になるって約束したもの。 だからこんな裏切りを受けても、喜代美の意思を尊重するわ。 だけど――――。 「……さより」 みどり姉さまが、心配して私を気遣う。 他の家人達も声こそかけないが、遠巻きに気の毒そうな視線を私に向けていた。 「大丈夫よ。私は大丈夫」 誰にともなく笑ってみせる。 大丈夫。私は傷ついてなんかない。 .