翌日の朝。起きて働き出す家人達のほとんどが赤い目をしていた。 やはり皆も、後悔と悲しみのあまり、ゆうべはよく眠れなかったのか。 そんな中で、喜代美だけがいつもと変わらぬ涼しいまなざしをたたえていた。 けして取り乱すことなく落ち着いた物腰で、けなげに悲しみに耐える彼の姿が、余計に家人達の涙を誘い胸を痛ませた。 (ゆうべ、喜代美は泣かなかったのだろうか) 心配はしていても、かける言葉が見つからない。 八郎さまを失った穴は大きい。 そして この日より、喜代美から笑顔が消えた。 .