痛む身体をさすりながら、やっと屋敷に着いて門をくぐると、後ろから喜代美の声がした。
「さより姉上」
振り向くと、喜代美もちょうど今戻って来たようで、門を抜けるとこちらに微笑みかけてくる。
「あ、喜代美。おかえりなさい」
「稽古。だいぶきついようですね」
喜代美は私の身体を気遣うように、心配そうな表情を浮かべる。
(しまった。きっと歩きながら、痛そうにさすっているところを見られたんだわ)
「なんの。これくらい何ともないわ!
喜代美のほうがもっと厳しい調練を受けてるじゃない」
強気で笑ってみせると、喜代美も目を細めて安心したように微笑んだ。
そのままふたりで玄関から屋敷に上がり込むと、ちょうど出迎えたみどり姉さまが喜代美に声をかけた。
「喜代美さん。文が届いておりましたよ。
お部屋に置いておきましたから」
その言葉に、喜代美は顔を輝かせて一瞬だけ私のほうを向く。
「みどり姉上、ありがとうございます!」
嬉しそうにお礼を言うと、慌ただしい動作で部屋へと向かった。
(きっと、両兄君からのお返事だわ!)
私も嬉しくなって、部屋へ急ぐ喜代美の後を追いながら、荷物を置くために自室に戻った。
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