おののく身体をそっと押さえた。額ににわかに汗が浮かぶ。
(まさか……学生である喜代美たちに、本当に戦地へ赴く時が来るのだろうか)
今までは漠然と、藩の重役がたはきっとそんなことさせないだろうと思い込んでいた。
白虎士中隊は、正規軍といえども上士の子弟たちが集まる少年部隊。
これからの会津藩を担うはずの彼らを、主君の護衛役には当てても戦闘員として使うはずがない。
けれど戦況は、はかばかしいとは言えない。
だからこそ、白虎寄合隊は戦闘員として戦地へ送られた。
もし西軍が国境を守備するわが藩や同盟軍を破り、会津盆地まで攻め入ってきたら。
もし会津藩が、危急存亡の秋まで来たら。
そうすればやむなく喜代美たちも戦うことになるだろう。
弟君が望んだとおりに。
(そんな―――)
そこまで考えが及んだとき、
それほどまでにわが会津藩は窮地に追い込まれているのかと身震いした。
※おののく……体や手足がふるえる。
※はかばかしい……物事が順調に進んでいくさま。また、望みどおりの方向へ進んでいくさま。
※危急存亡の秋……生き残れるか滅びるかのせとぎわ。
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