「さき子さまからおうかがいいたしました。弟君とお心が通じ合ったそうでございますね。
いずれ夫婦の約束もなされたとか……。お祝いのお言葉も申さず、大変失礼いたしました」
深々と頭を下げるおゆきちゃんに、私は驚いて恐縮してしまう。
おさきちゃんからだいぶ誇張された情報が伝わっていることにうろたえて、あわてて訂正した。
「やだ、違うわ。夫婦の約束なんてしてないわよ。ただ、お互いの気持ちを確かめあっただけ」
面映ゆい気持ちを隠すように、否定して胸の前で両手を振る。
おゆきちゃんは顔をあげて目をぱちくりすると、やはり面映ゆい表情で「あ、申し訳ございません……」と 小声でうつむいた。
「……でも、羨ましいです。恋慕うお方から、同じ思いをいただけるなんて」
ぽつりとおゆきちゃんはつぶやく。
「おゆきちゃんだって、おさきちゃんの弟君と……」
言ってから、はっとして口をつぐんだ。
が、すでに遅く、私が彼女の想いに気づいていると知って、おゆきちゃんの顔がみるみる羞恥に歪む。
「私の気持ちを、ご存じでしたか……」
「あっ……ごめんなさい!知ってたと言うか、そうなんじゃないかなあ……って思ってたくらいで!」
言い繕うにも、うまい言葉が出て来ず、曖昧に笑ってごまかす。
おゆきちゃんは恥ずかしさからか、目を潤ませてうつむいた。
「……おゆきちゃんも、あの子と何か約束してるんじゃないの?」
べつに詮索する訳じゃないけど、彼女達の仲も私達と同じように通い合っていると思っていたから訊ねてみたのだけど。
おゆきちゃんは目を潤ませたまま、哀しそうにかぶりを振るだけ。
「想いを寄せられても困ると申されました。私の気持ちは……迷惑でしかないのです」
「まさか……そんな」
「いいえ。そうなのです」
おゆきちゃんは哀しそうに笑った。
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