この空を羽ばたく鳥のように。





 はかばかしくない戦況への不安と、早苗さんに対する申し訳なさを、心の隅に追いやるかのように、私は一心不乱に稽古に打ち込んだ。

 けれど乱れた心が表に出るのか、竹子さまから一本も取れないまま日々が過ぎていた。



 「一本!それまで!」



 立ち会い人の声に思わず歯噛みする。
 また今日も、竹子さまから一本取れなかった。

 他の人ならば一本取るのは容易(たやす)いのに、竹子さま相手となると、私の技量は足下にも及ばない。



 「……もう一本お願いします!」



 くやしさに歪む顔を隠すように深く頭を下げて懇願すると、竹子さまは首を横に振った。



 「もうよしたほうがよろしいですわ。あなたには、やる気が見受けられません」



 竹子さまは冷ややかに言い放つ。



 「そんな……!やる気なら十分あります!」



 かっとなって食い下がろうとするけれど、竹子さまの目はあくまでも冷たい。