閏四月十九日の朝五ツ(午前8時)頃。
お城三の丸から出立する朱雀士中四番隊を見送りに、私達家族はお城へと向かった。
三の丸埋門あたりには、出陣する家族を見送る人だかりがすでにできている。
家族とともに佇むおますちゃんの姿も見えた。彼女も夫を見送るためにお城まで出てきたのだ。
私達が到着してからまもなく、越後方面へと向かう朱雀士中四番隊が御門の中から行進してきた。
会津藩の若き精鋭達の中で、悠々と歩いてゆくふたりの兄君を、喜代美は瞬きもせずに黙って見つめる。
その様子をとなりで見ながら、喜代美はいま何を考えているのだろうと思いをめぐらせた。
その横顔は、遠い北の大陸に帰ってゆく渡り鳥を仰ぎ見ていた、あの時と同じ。
自分だけが取り残された寂しさ。
ついてゆけないもどかしさ。
それが伝わってくる。
そして もうひとつ。
それは、両兄君の無事を願う祈り。
『どうか ご無事で』
兄君がたをつぶさに見つめる喜代美から、強く強く伝わってくる。
彼のとなりで目を閉じ、その思いに寄り添うように祈った。
どうかこれ以上、喜代美を苦しませないで と。
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