この空を羽ばたく鳥のように。





 喜代美のご母堂であるえつ子さまは、母上よりだいぶお若くとても美しい方だった。

 えつ子さまにお会いして、初めて喜代美は母親似なのだと分かった。

 顔立ちはもちろん、背の高さも母親ゆずりなのだろう。

 八郎さまも同じなのだろうけど、彼のほうは男性の部分が大幅を占めていて、えつ子さまとは目元が似てるくらいだろうか。


 同じ顔でも、えつ子さま(女性)⇔喜代美(中性)⇔八郎さま(男性)みたいな構図が頭に浮かび、

 お茶を淹れて客間に運びながら、つい苦笑してしまった。



 (いや、いかんいかん。そんなこと考えている場合ではない)



 だって、えつ子さまが屋敷を訪れた理由は………。



 「……失礼いたします」



 許しを得てから客間に入ると、えつ子さまと母上は向かい合って座り、時節の挨拶やたわいもないお話をされていた。


 とりあえずお茶を置いて、さっさとその場を退出しようとする私に、えつ子さまがやんわりとおっしゃった。



 「さよりさん。あなたもここに居てくださいな」

 「わっ、私もですか?」



 少しうわずった声で訊ね返すと、えつ子さまは鷹揚に頷かれる。

 そう言われてはしかたない。
 あきらめにも似た心地で、私はえつ子さまの斜向かいに座り直した。










 ※鷹揚(おうよう)……ゆったりとして小事にこだわらないこと。おっとりとしていること。