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「奈々佳、元気ないね」
「そんなことないよ」
嘘。結構そんなことある。
だけど、私のことを心配してくれる綾乃にまで、私はいつもの噓を吐く。
ごめんね。騙したいわけじゃないんだ。
「そんなことなくないぞ」
「大輝……」
綾乃の彼氏、兼、私の幼なじみでもある大輝にまで言われてしまう。
みんな、ちょっと鋭すぎる。
もっと鈍くていいよ。私のことになんか、なんにも気づかなくていいよ。
「……奈々佳、もしかしなくても要のこと?」
「なんで?」
「さっきまで、要といたんでしょ」
綾乃に当てられ、私は一気にうろたえる。
「そう、だけど……。……私、そんなに隠し事下手かな?」
「いや、奈々佳は隠し事上手いだろ。昔から」
「じゃあ、なんで……」
「そんなの、私たちが奈々佳の親友と幼なじみだからじゃない?」
そう言って笑う二人に、私はいつも救われる。
なんでもないことなのかもしれないけど、それがなかったら、私はもっと笑うのが下手くそだったと思う。



