フルール・マリエ



事務所に入ると、先輩の冴羽さんも事務机で書類を作成しているところだった。

「お疲れ」

「お疲れ様です」

冴羽さんの隣の席に書類を置き、パソコンを起動させる。

「朝見ちゃんが選んだ入口のドレス、私のお客様にも好評だったわよ」

「え、本当ですか?」

「原色一択、とおっしゃってたお客様なんだけど、試しに着てみたいって。そしたら、これもいいかもって柔らかい色とも迷い始めちゃったの」

「嬉しいけど、悩ませてしまったのは申し訳ない気持ちです」

「普段、絶対選ばない色なんですって。自分のお気に入りのドレスが思ってもみなかったイメージになるなら、それに気づかせてくれた朝見ちゃんには感謝しかないわ」

来店されるお客様は、神崎様のようにネットからイメージのドレスをいくつかピックアップしてくれている。

けれど、実際に着てみるとイメージが違ったり、逆に絶対無い、と思っていたドレスが着てみたら良く似合う、なんてことも良くある。

普段着とは全く異なるドレスは色の重ね方や装飾やフォルム次第で、全く別の印象になることもあるので、2、3回目に来店されるお客様には、選択の幅が広がり悩まれるケースが多い。

わざと悩ませるつもりはないが、お客様のイメージの外にあるけれど、お似合いでお気に入りのドレスを見つけられた時の感動は手を取って喜び合いたい程だ。