フルール・マリエ



山口晶様が訪れたのは、元々来店予約していた3時間前だった。

先週の電話は新郎からの連絡で、次の来店前に話ができないか、という相談だったため、この時間を提案させてもらった。

まだ新郎新婦は同じ家に引っ越しできないようで、ここで話をした後、新郎が新婦を迎えに行って改めてここに来店する予定らしかった。

新婦との打ち合わせをしたことがあっても、新郎と打ち合わせすることはそう無いので、予想がつかなかった。

打ち合わせスペースに新郎を案内し、向かい合って着席すると、新郎が口を開いた。

「前回はすみません。母が出しゃばってばかりで」

「いえいえ。お母様も真剣になるのはわかります」

少し逡巡する様子を見せたのちに、新郎は口を開く。

「母は自分の結婚式の時に両親に恥をかかせた事を悔やんでいるんです」

思いもよらぬ方向に向かい始めた話に、ただ頷いて新郎の言葉を待った。

「母は人と違う事を結婚式はしたかったそうで、両親にはほとんど相談せずに父と内容を決めたそうです。僕が聞く限り、賑やかな結婚式ってだけで、何が悪いのかわからないんですけど、母の親戚からは酷い言われようだったそうです。格式とか風習とか、そういうのを重んじる人もいますからね」

考え方や土地柄などでも様々な結婚式の形があるのは確かで、雁字搦めになってしまう新郎新婦も今まで見てきたので、そうですね、と同意した。