フルール・マリエ



次の日、出社した時には事務所に千紘の姿が無く、どうやら本社に寄ってから出社するようで安堵した。

車を建物の前まで回してもらった後、車内に気まずい雰囲気は漂っていたものの、当たり障りのない話をして家まで送ってくれた。

結局、貰った服は私のクローゼットの中に入っているけれど、当分は見られそうもない。


今日は和装担当の楢崎さんに山口様の色打掛の相談をすることになっていた。

「赤と水色が上手い具合で合っている着物ってなかなかないのよねぇ。水色とピンクならあったりするんだけど」

新婦がおそらく赤、お母さんが水色、あわよくば上手い具合に混じり合った清楚である着物など無いだろうか、と都合の良い相談をしてみたところ、楢崎さんは整った眉を困ったように下げた。

「ですよね。すみません」

「まぁ、色にはイメージがあるだけで、雰囲気で気に入って頂ける着物もあると思うから、色にこだわり過ぎない方がいいわよ」

一概に赤、と言っても赤地に柄がついていたり、白地に赤が入っていたり、赤を基調に他の色が混ざっていたり、どこまでを赤に分類するか難しい着物も存在する。

柄の組み合わせも多い分、ドレスよりも色打掛を選ぶ事の方が、より迷われる方もいるくらいなので着物を選ぶのは難しいものだ。

「朝見さん。山口様からお電話です」

山口様の次の訪問は来週だったはずだが、何か変更点でもあるのだろうか、と考えながら楢崎さんに礼を言って下に降りた。