「昔の事を引き合いに出されるのは俺もいい気はしないよ。情け無い過去だからね。聖は俺が誰かわかってなかったみたいだから、このまま黙っておこうと思ったよ。でも、自分の事のようにお客様に寄り添って悩んで喜んでる姿を見てたら、目が離せなくなってしまった。情け無い過去も利用したくなるほど聖のことをもっと知りたくなって、自分から暴露してしまうことになったよ」
階段を使って降りて来た女子高生が視界に入ると、私達の姿を見てこそこそと耳元で何かを話し、恥ずかしそうに足早に通過して行った。
「ちゃんと、俺を見て」
千紘の綺麗な瞳は思考力を奪い、頭をぼーっとさせられそうで怖いのに、目が離せなくて息もつまりそうになる。
「昔の千紘を見てるのは聖でしょう?比べてほしくない。今の俺だけを見てほしい。聖が意識してるのはどっちの俺なの?」
泣き顔の千紘の顔が頭の中にチラつく。
目の前にいる千紘と同一人物だなんて思えない。
だけど、必死に昔の千紘と重ね合わせて、千紘を意識しないように、緊張するのもときめくのも気のせいだと言い聞かせた。
だって、こんな何でもできる美形な男を好きになったって、惨めだし自分が傷つくだけだ。

