「ちょっと、来て」
千紘に手を引かれ、抵抗しようと足に力を込める。
「言うこと聞かないと、ここでお姫様抱っこする」
こんな公衆の面前でお姫様抱っこなどされようものなら、私はもう生きていられない。
結局は千紘のペースに巻き込まれてしまっているのに、この手を無理矢理解いて逃げることもできないのだ。
ショッピングビルの階段の踊り場にベンチがあり、休憩スペースになっている。
そこに座るよう促されて、力が抜けるようにベンチに腰を下ろした。
千紘は私の足元に屈みこんで、足を掴んだので咄嗟に引っ込めようとすると、それも阻止される。
壊れ物を扱うような丁寧な仕草で両方のサンダルを脱がされ、元々履いていた靴を紙袋から出して置かれた。
「おろしたての靴で連れ回しちゃったからだね。気づかなくてごめん」
ぎこちなさが微塵も無い動きが、千紘の今までの女性との関わりを方を表しているようで、こんな仕草にすらドギマギしている自分が嫌だった。

