「私、予定があるから千紘の相手はできないの。じゃあね」
『余程見たいテレビ番組なんだね』
言われてから気づいたが、時すでに遅し。
慌てて電話をとったために、テレビの音量がそのままだ。
きっと、千紘にも筒抜けだろう。
『家に引きこもってるなら、俺に付き合ってよ。聖を楽しませられると思うな』
「無駄な自信見せつけられても行かないから」
千紘の声が聞こえてくる前に一方的に切ると、携帯をテーブルに置いて再びテレビに視線を向ける。
「上がって上がって。今、聖に準備させるから。お茶しかないんだけど、いいかしら?」
外から帰って来た母の弾んだ声が玄関で聞こえてくる。
お客さん?と考えた後、勢い良く起き上がったと同時にリビングに入って来た母が連れて来たのは、美しすぎる長身の男。
「いえ、お構いなく。聖の準備ができるまで、待たせてもらえるだけで十分ですから」
「な、何で家に上がり込んでるの!?さっきの電話、どこからかけてたの!?」
「聖の家の前だよ。どうせ、拒否されると思って先手を打ったんだ。そしたら、聖のお母さんに出会ってね」
「千紘君、本当に立派になったわねぇ。声をかけられた時はびっくりしたわよ。ほら、ぼーっとしてないで準備して来なさいよ!千紘君待たせたら悪いでしょ」
もう一度、反論しようかと逡巡したものの、不利すぎるこの状況に最早、逃げられないと悟って、渋々自分の部屋で身支度を整えることにした。

