フルール・マリエ



試着室でインナーを着替えてもらい、パニエにドレスを被せ、真ん中に空間を作り、新婦にその中に入るよう促す。

「なんだか、着るというより、入るって感じですね」

「特にプリンセスラインのドレスはボリュームを出すために、パニエが必要不可欠なんです」

新婦が真ん中に立つと、ドレスを一気に上げ、胸元を抑えてもらいながら後ろを編み上げる。

華奢なので編み上げを思い切りしたが、それでも胸元に空間ができている状態だった。

「当日はしっかりとサイズを合わせますから、心配なさらないでくださいね」

鏡に映る自分の姿を見て、新婦は嬉しそうに頷いた。

「美玲」

雰囲気を出すために髪も簡単にアップにまとめていると、試着室の外から男性の声がした。

「もうすぐ出られるよ」

「いや、悪いけど仕事に行かなくちゃならなくなった」

「あー、そうなんだ。仕事じゃ仕方ないね」

「神崎様、新婦様のお支度が済みましたので、ご覧になりませんか?」

「申し訳ありませんが、すぐに出なくてはならないんです。美玲に任せます」

私が止める間も無く足音が遠のいていってしまい、私は呆然とした。