「やめてよ。私は千紘が思うほど純粋な気持ちじゃなかった」
千紘は不思議そうな顔をし、首を傾げる。
真田さんが千紘だと認識してから、考えたくなくても考えるのはやっぱり小学生の時の千紘と私の関係。
クラスの男子にからかわれる千紘は何も言い返さずに泣いてばかりだったから、代わりに私が言い返す場面が多々あった。
「千紘と仲良くしてれば、女子の中で一目置かれたの。千紘は女子の間でアイドルみたいなものだったから」
千紘との過去を思い出すたびに自分の邪な気持ちも蘇ってきて、自己嫌悪を感じた。
千紘と1番仲が良いのは自分だと、周りにアピールするように男子に言い返す時には特に周りの目を気にした。
子供の頃とはいえ、自分を構成する感情の一部にそういう負の感情が存在することが嫌だった。
「なんだ。win-winだったわけね」
思いのほか、明るい声が返ってきたので驚いて顔を上げると、いつのまにか千紘の前のスープは無くなっていた。
「冷めるよ?」
自分の世界に入り込んでいたことを自覚して、慌ててスープに口をつける。

