千紘はカジュアルなイタリアンの店だという場所に車を停めた。
店内は至る所から変わった形の間接照明からの光によって暖かく照らされていた。
個人経営の小さな店で、身長の高い千紘には窮屈そうに見えた。
空いているのは私たちが通された2人がけ席だけで、他の席は男女の組み合わせばかりだった。
席に着く時に周りの女性が千紘にちらりと視線を向けるのがわかった。
本人は日常茶飯事だからか、全く気づいていないものの、一緒にいる私としては居心地が悪かった。
「来てみたかったんだけど、1人で来るにはハードル高くて」
「相手なんていくらでもいるでしょう?」
「なんか俺のこと誤解してない?俺は倫理に反するようなことはしないよ」
ドラマのワンシーンかと錯覚させるような芝居がかったセリフに眉をひそめる。
「そんな意外そうな顔するなよ。俺はデートも結婚も興味ないよ」
「ウェディングドレスショップの支配人が言う言葉?」
「プライベートの価値観と仕事は切り分けられるようにできてるんで」
おすすめのディナーコースでいいか、と聞かれたので頷くとそれを2つ頼んでメニューを閉じた。

