フルール・マリエ



「何?他にも言い返したいことある?」

「え?」

「こっち見てるから」

「何でもないよ」

「そう。俺、良く見惚れられるから、そっちかとも思ったけど」

笑うことなく自然な様子で話すので、冗談で言っているわけじゃないことに面食らう。

「・・・ナルシストめ」

「この顔で謙遜するのも嫌味でしょ?」

「それも嫌味なんですけど」

「そっかぁ。生きづらいなぁ」

きっと、そんなこと少しも思っていないだろう心のこもらない返事だった。

「仕事とプライベートは使い分けるタイプ?全然キャラ違うんだけど」

「そんなもんじゃないの?聖だって家にいたらスウェットでビール飲んだりするでしょ」

「な、何で知ってるの!」

「あ、そうなの?適当に言ったんだけど」

いきなり名前で呼ばれて少し動揺したのかもしれない。

思わず食ってかかると、千紘は見たことのない顔で笑った。

それがまたクラクラする美しさなものだから、見ていられなくなって目をそらす。