「しないよ。お節介な叔母がいてね。叔母を立てるために、たまに受けるんだ。断る口実ができてラッキーだったかな」
「ちょっと待ってよ。断る口実に使ったなら、私が付き合う理由ある?」
「夕飯を食べ損ねたのは事実だろ。何?約束でもあったわけ?」
「無いですけどー・・・」
「じゃあ、問題ないね」
千紘と違ってお見合いやデートなどとは縁遠いけれど、軽く受け流されると少し頭にくる。
女の子みたいで泣き虫な印象しかない千紘に結婚がチラつき、先を越されたようで、焦りのような感情が湧き上がる。
前を据えてハンドルを握る千紘の横顔は、油断すると目眩が起きそうなほどに綺麗で目が離せなくなる。
こんな完全無欠な顔をして着々とエリート街道を登っている、かつてのクラスメイトの姿が目の前にあると、嫉妬してしまう。
私と千紘の関係は小学生で止まっているせいか、私は未だに千紘を庇護の対象としているのかもしれない。
親離れをしてしまった子供から子離れできない母親の気持ちってこんな感情なのかしら、なんて。

