「そうなんだけど、もう少し粘ってみようと思ってる。今月の新作、今日カタログ届いてたよね?」
「これから探すんですか?来週来店されるのに、もう間に合わないんじゃないですか?」
「もしかしたら、間に合うかもしれないでしょう?本当に時間切れになるまでは諦めたくないのよね」
「朝見さんって熱い人ですよねぇ。尊敬しちゃう」
皮肉を込めた牧さんの言い方に、チクリと胸が痛んだけれど気のせいだということにした。
牧さんは仕事と割り切って要領良くルール通りに物事を進めていける人だ。
だから、若くても店の中では一目置かれている。
彼女が担当ならば三原様をこんなにも悩ませることはなかったのだろうか。
今更どうしようもないことを考え始めそうになって、その思いを断ち切り新作のカタログを手に取った。
結局その後も接客やデスクワークで新作のカタログは見られなかったので、それを鞄に入れようとすると「待ちなさい」と声がかかる。
「仕事を持ち帰るつもりですか?」
「自分が将来着るドレスの参考です」
「嘘をつかないでください。三原様のためですね?牧さんとの話は聞こえていました」
残業もつけずに仕事をすることを真田さんは許さない。
けれど、カタログを見るくらいなら仕事のうちでもないだろうと、周りも見ずに迂闊だった。

