「やっぱり、こっちもいいなぁって思っちゃって」

新婦が指差すのは迷っているもう一つのドレス。

こちらは真紅の薔薇が大きくプリントされた存在感のあるドレス。

どちらも雰囲気は全く異なるドレスだが、試着してみたところどちらも良くお似合いで、新郎新婦は頭を悩ませている。

「新郎様はどちらの方がお好みですか?」

急に話を振られた新郎はあからさまに困った様子で頭を掻いた。

「正直、どっちも違いすぎて、どう比べていいのかわからないんですよ。どっちも似合ってるとは思うんですけど」

ドレスの悩みどころは、似ても似つかないドレスがありすぎることだ。

一生に一度の晴れ舞台。

お気に入りを着たいけれど、あれもこれも素敵。

実際、リハーサルのようなシチュエーションでドレスを試着はしないから、想像の中の式場に自分達がどうマッチするのかイメージを膨らませなければならない。

似たようなドレスであれば比べようはあるけれど、今三原様が悩まれているのは全く異なる種類のドレス。

前回の1番として予約したイエローのドレスも悩みに悩んで選んだのだ。