「どんな魔法を使ったんですか?」
ドレスを着る手伝いをしながら、新婦が小声で訊ねる。
「隆之君が突然試着するってなったから」
「魔法なんて必要なかったですよ」
「そんなはずないですよ。さっきの重い雰囲気が嘘みたい」
「新婦様を想う気持ちが溢れた結果です」
「どういうことですか?」
「愛されていますね。新婦様」
「えー、何ですかぁ?」
相手のことを全てわかるなんて、新婚の2人には難易度が高すぎるだろう。
だからすれ違うこともあるだろうけと、認め合った2人なのだから、2人でちゃんと乗り越えて行けるはずだ。
「さあ、お披露目しましょう」
すらりと直線的に広がる裾にスパンコールが遠慮がちに散りばめられたエンパイアラインのウェディングドレスは、小柄で華奢な新婦によく似合っていた。
新婦の前に被らないように、試着室のドアを開ける。
新郎の視界に入らないよう私は身を隠すので、新郎の表情は見えなかった。
はにかむような新婦の横顔。
照明に当てられてスパンコールが煌めいている。
「どう、かな?」
恐る恐る新婦が訊ねると、少しの間を空けて、新郎が言う。
「とても、綺麗だよ」
私は心配しすぎていたのかもしれない。
私のアドバイスなんてなくても、2人が想い合う強い気持ちさえ信じられれば、それで良かったのだ。
新婦は満面の笑みを横顔に浮かべた。

