フルール・マリエ



「日常生活に支障はありません。運転免許なども取得できます。ただ、こういう微妙な色の区別が必要な時に役に立たない」

新郎の話を聞いていて、ハッと気づいた。

「新婦様がピンクのドレスを希望していらっしゃるから、でしょうか?」

「そうです。ピンクと言ってもいろいろありますよね?美玲がどのドレスがいいか、スマホで検索して僕に見せてくれたのですが、僕には色の違いを美玲と同じように共有できなかったんです。・・・ショックでした」

「あの、立ち入ったことかもしれませんが、新婦様にこのことは・・・?」

「話していません。先程、色覚障害は日常生活に支障は無いと言いましたが、世間での理解は様々です。色覚障害自体、珍しくも無いものではあります。ですが、美玲に話してどう思われるのか怖くて、打ち明けられませんでした。日常生活に支障が無いのに、話す必要は無いと思っていましたが、こんなところで困る事になるなんて思いもしませんでした」

長く話した後、新郎は視線を机の下にある自分の手に下ろし、深くため息をついた。

新婦にこのことを話すかどうかは新郎が決める事で、話した方がいいですよ、と私が促すのは入り込みすぎではないかと思った。