フルール・マリエ



「すみませんでした。お手数をおかけして」

「いいえ。新婦様からはお仕事も多忙だと聞いております」

「お恥ずかしいです。トラブルが起きていたのですが、ある程度収束したので今後は予定通りに来られると思います」

「そうなんですね。一緒に来て頂けるなら新婦様もお喜びになると思いますよ」

「そういうものですよね」

独り言のように呟いた言葉は何か含みがあった。

「あの、差し支えなければ私に話して頂けませんか?一緒に試着をできない訳を」

「一緒に試着をできないんじゃないです」

益々、訳がわからず、どう返したら良いのか迷ってしまい次の言葉が出ない。

「実は、色覚障害なんです」

色覚障害という名前を聞いたことはあるものの、特定の色が識別できない、というような漠然とした知識しか持っていなかった。

「僕の場合は、特に赤系の色が識別できなくて、例えばピンクと白の区別が僕にはつかないんです」

今日新郎が着ている薄ピンクのシャツに視線が向くと、新郎がその視線に気づいて小さく笑う。

「もしかして、このシャツは白ではないですか?」

「少し、ピンクがかっています」

「僕はこれを白いシャツと思って着ています」

何となく、最初の新郎の印象から薄ピンク色のシャツを選ぶことに不自然さを感じていたのだが、そんな理由があったのか。