フルール・マリエ



本社から直帰するという千紘の家に行く、と行って私は一度家に戻ってから千紘の家に向かった。

連絡をした時に、千紘が一瞬息を飲むような雰囲気があったので、私が何のために家に来ようとしているのかわかったかもしれない。

そびえ立つマンションの一室のチャイムを鳴らすと、まだ上着を脱いだばかりの千紘が私を迎えてくれた。

ソファに腰を落ち着けると、千紘は飲み物をテーブルに置いて息を吐く気配があった。

千紘は私が話し出すのを待ってくれている。

「プロポーズの答えを、伝えに来たの」

「うん」

私は目の前の飲み物を見つめ、千紘も正面の下よりに視線を固まらせていた。

「私ね、今の仕事を続けたいと思ってる」

「うん」

「やり甲斐があって好きな仕事なの」

心臓がドクドク脈打っていて騒がしく、ちゃんと話をできているのか不安だった。

「でも、千紘とも一緒にいたい」

千紘は私の話が終わるまで、頷いて聞き役に徹してくれるようだ。

「私、考えたの。海外に行っても今の仕事ってできるんだって。英語は、今から勉強しないといけないんだけど、千紘と一緒にいながら好きな仕事もできるんだ、って思った」

千紘が顔を上げたので、私は鞄から丁寧に包んだ一輪のバラを千紘に差し出す。

「一緒にいよう。千紘」

花嫁がブーケを持ち、新郎がブートニアを胸に挿す意味は、新郎がプロポーズの時に花束を渡し、花嫁がその中の一輪を取ってイエスの意味で新郎に渡すからだ。