フルール・マリエ



帰りの車内は全く別の話をしていたものの、ぎこちない雰囲気は否めなかった。

白い花束は貰って欲しいと言われて、私の部屋で花瓶に入れられ飾られている。

バラとかすみ草で作られたその花束は部屋の中にほんのりと香りを漂わせている。

ただ、その匂いが鼻腔をくすぐるたびに、千紘の微笑を思い出して苦しくなる。

保留にしたのは私自身なのに、随分と勝手な感情だ。

プロポーズをされたことは嬉しかった。

私も千紘とそうなりたいと思っていたから。

けれど、よぎったのは海外赴任のこと。

一緒にいるということは、千紘と海外に行くということになる。

そうなると、私は今の仕事を辞めてついて行くという形になる。

結婚はタイミングだとかきっかけが必要とは耳にするし、実際に友達の中にも彼氏の転勤をきっかけにして結婚した例もある。

まさか自分がそういったことをきっかけに結婚を選択する時が来るなんて思わなかったし、それも海外。

今の仕事が好きだし、続けていきたいと思っていたから、あの場で千紘の言葉に頷けなかった。

千紘のことだけを考えて、他のことは考えることなく、純粋に千紘に飛び込んでいけたら良かったのに。