「想像だからこそ、逆に夢を見られることもあると思うんだよね」
「経験するよりも想像の方がお客様のことわかるってこと?」
「どっちがいいってわけじゃないけど、経験すると固定概念に捕らわれるんじゃないかって思って。想像は無限でしょ?理想はあるけど、想像の方が自由な気がする」
「聖はお姫様に憧れたんだもんね」
「改めて言わないでよ」
くすくす笑う千紘を睨みつけたが、何の効力も持たないことはわかっている。
「一人一人が望むお姫様にしたいんだよね。あくまでも私の理想だけど。お客様には押し付けないようにしないといけないけどね」
「聖のお客様はみんな幸せそうだよね。それを見る聖も」
千紘が柔らかい顔で私の髪を優しい手つきでさらりと撫でる。
「聖自身はお姫様になりたいと思う?」
「憧れてはいるよ」
「自分がお姫様になれたら固定概念に捕らわれるかもしれないよ」
「そうだよね。それも怖いな。今までみたいに仕事できなくなっちゃうのかな」
「聖なら、また違う手段を考えられそうだから、心配なさそうだけど」
「無責任なこと言わないでよね」
「俺がどれだけ聖のこと見てると思ってんの?かなり根拠のあること言ってるつもりだけど」
「し、仕事しなよっ」
「してるでしょ?足りてない?」
照れ臭くなって怒ったように思わず言ったものの、千紘の仕事ぶりは批判なんておこがましい程、十分過ぎることは一緒に働いている私が良くわかっている。
「いいえ、完璧です」
「正直でよろしい」
不貞腐れて早口で呟くと、千紘が笑いながら私の頬を人差し指でつんつんといじめた。

