「どうぞ」
ハンカチをそっ、と渡すと新婦はか細い声ですみません、と受け取って優しく目を抑えた。
「確かに、結婚式の準備に苦労される方も多いです。でも、大変だったけど楽しかった、とおっしゃります」
「はい、そういう話も友達から聞きました。でも、今のままじゃ、当日を迎える前に嫌になってしまいそう」
再び溢れる涙を必死に抑えながら、弱々しく私に訴える姿がとても健気だった。
「当日を楽しかった、と思うまではまだ先のことですけど、準備の中でお客様が1番楽しかった、と感じてくださるものもあるんですよ」
「それって、何ですか?」
神崎様がパッと顔を上げたので、その大きな目をしっかり見据えながら微笑む。
「ドレス選びです」
結婚式の打ち合わせを進めて行く中で、準備することが具体的になってくればくるほど、その量の多さと時間の少なさとお金の大きさも明確になる。
綺麗なお花を見せられながら、これはいくらのお花です、これはいくらです、どれがいいですか?なんてことになる。
ただ、フルール・マリエの場合は式場のプランの中に金額ごとに既に割引されたプランでドレスのレンタル代が含まれている。
最初に予算を伝えてしまえば、後はその金額内で考えてコーディネートするので、ドレスの値段を天秤にかけず、試着を楽しめる。
このブランドのこれがいい、と決め打ちだと金額はプランを超えることもあるが、そうでなければ多くの種類の中から金額を気にせずドレス選びに集中できる。
「可愛くて綺麗なドレスを着ることに、どんな女性も1度は憧れたのではないでしょうか。私達は一生に一度の一着を心を込めてお選びします。迷ったら、私達にご相談ください。神崎様に納得頂けるまで、ご相談にのりますよ」
神崎様は赤くなった目元を細めて遠慮がちに微笑み、頭を下げる。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」

