フルール・マリエ



千紘はそうだよね、と観念したように息を吐いた。

「大学時代って、俺の暗黒時代なんだよね。その頃すごい、調子に乗ってて、彼女も彼女みたいな子もころころ変わって、遊んでばっかりだったから、そういうの聖が聞いてたらどうしようかと思って。・・・今、知られることになったけど」

わかりやすく落ち込んでいる様子の千紘を見て、何だかいたたまれない気持ちになった。

「でも、今は違うからっていう弁解をしたかった」

言いにくかったのは、そういうことか。

自信に満ち溢れているように見えるのに、たまに垣間見える怯えのようなもの。

千紘のそういう一面を見るたびに安心するのは意地の悪いことだろうか。

「そんなの、必要なかったのに」

千紘が息を飲むような気配と、視線が一瞬向けられたことを感じた。

「千紘を見てればわかるよ。私がそれで離れると思った?」

今の千紘が遊び半分で私と付き合っていると思うはずがない。

「見くびられてるなぁ、私も」

からかい気味に笑うと、ちょうど赤信号で停止してすぐに、千紘がキスをする。

「聖。好き」

「好きだよ、千紘」

それでも、私の知らない千紘の話を聞いて少し嫉妬したことは、心の中にしまっておこう。