フルール・マリエ



綺麗な光景に浸っていると、思わずくしゃみが出て、何だか台無しにした気分になった。

「寒くなった?」

「んー、ちょっと」

「入る?」

千紘は自分のコートの前を広げて受け入れ体制を整えてくれたものの、周りに視線を巡らせて逡巡した。

「みんな自分達の世界に入ってるんだから、気になんかしてないよ。それより、寒いから早く」

おすおずと肩を丸めてコートの中に入れてもらう。

「お邪魔、します」

「はい、お邪魔してください」

コートが閉じられると、千紘の体温からなのか、自分が熱いせいか、体が暖かくなっていく。

「思ったけど、こっち向きだと夜景見えなくない?」

「そうだよね」

「後で、前からも抱きしめてあげるから」

まるで、私がねだってるみたいじゃない。

正面からコートに入って行ったことを恥ずかしく思いながら、方向を変えて千紘に後ろから抱きしめられた状態で夜景を眺める。

これはこれで、かなり落ち着かない状態だけれども、体に伝わる暖かさはとても心地よかった。